Seen2,大演説(その1)
平成十一年八月十一日(水曜日)
午後五時六分開議
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○議事日程 第四十五号
平成十一年八月十一日
午前十時開議
第一 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制
等に関する法律案(第百四十二回国会内閣提出、第百四十五回国会衆議院送付)
第二 犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案(第百四十二回国会内閣提出、
第百四十五回国会衆議院送付)
第三 刑事訴訟法の一部を改正する法律案(第百四十二回国会内閣提出、
第百四十五回国会衆議院送付)
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○本日の会議に付した案件
一、日程第一より第三まで
一、法務委員長一条五月君解任決議案(篠原秋穂君外五名発議)(委員会審査省略
要求事件)
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○議長(結城静香君) これより会議を開きます。
日程第一 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案
日程第二 犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案
日程第三 刑事訴訟法の一部を改正する法律案
(いずれも第百四十二回国会内閣提出、第百四十五回国会衆議院送付)
以上三案を一括して議題といたします。
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○議長(結城静香君) これより法務委員長の報告を求めるのですが、篠原秋穂さん外五名から、委員会審査省略要求書を付して、法務委員長一条五月さん解任決議案が提出されておりますので、まず、本決議案についてお諮りいたします。(拍手)
法務委員長一条五月さん解任決議案は、発議者要求のとおり委員会審査を省略し、日程に追加してこれを議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(結城静香君) 御異議ないと認めます。
よって、本決議案を議題といたします。
まず、発議者の趣旨説明を求めます。篠原秋穂さん。
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〔議案は本号末尾に掲載〕
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〔篠原秋穂君登壇、拍手〕
○篠原秋穂君 ただいま私どもは、リベラルの会・千年紀連合、民主党・新緑風会、日本共産党、社会民主党・護憲連合、人民党、新平和党とともに、一条法務委員長の解任決議案を提出いたしましたので、代表して、その趣旨を御説明いたします。(拍手)
先週の金曜日、自民党参議院国対委員長は、議員総会で、八月九日月曜日、つまり一昨日の法務委員会で組織犯罪対策三法案の採決をすると明言され、それがテレビのニュース等でも流れました。
私たちは、法務委員会の理事懇談会で今週の日程協議の真っ最中でございました。
そこで、自民党、自由党、公明党、治民党が主張するような採決を前提とした委員会開催に応ずることは国民に対する裏切りとなりますので、私は、リベラルの会の理事として強硬に反対し、平行線のまま理事懇は深夜に及びました。
ところが、突然、一条……(「あなた、いなかったじゃないか」と呼ぶ者あり)おりました。
一々こんなことに、不規則発言に応じることはございませんね。不規則発言はおやめいただけますでしょうか。
ところが、突然、一条委員長は、自民党、自由党、公明党、治民党の理事だけの賛成のもと、職権を乱用し、委員会開催の定例日でもない一昨日月曜日に、通信傍受、いわゆる盗聴法を含む組織犯罪対策三法案の委員会を決定いたしました。
私、リベラルの会の理事は、民主党・新緑風会、そしてオブザーバーの共産党、社会民主党・護憲連合、人民党、新平和党とともに反対を表明し、怒りを持ってその理事懇の席から退席いたしました。(発言する者多し)
不規則発言はおやめいただけませんか。議長、少しお願いいたします。
○議長(結城静香君) 御静粛に願います。
○篠原秋穂君(続) ありがとうございます。(拍手)
そして一昨日、定例日でもない午後八時という異常な時間帯に、一条法務委員長は職権を乱用し、法務委員会を強硬に開催いたしました。そして、あろうことか、採決を強行しようと企てたのです。
その後、慌ただしく、まるで逃げるように委員会室を抜け出て、参議院議長に採決をしたと報告した後、九時半から記者会見をなさったその席で、委員長はこのようにおっしゃったそうです。
質疑を終了し、直ちに採決すべしとの自民党鈴木理事の動議を採決し、その後、組織犯罪対策三法案について採決し、可決したと説明したそうです。それがテレビのニュースにも流れました。
しかしながら、私どもはその席におりましたが、自民党理事の緊急動議は聞こえませんでしたし、委員長が……(「聞く耳持たないからじゃないか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)聞いていらっしゃれば聞こえます。本会議場ではお静かにしていただきたいと思います。
しかしながら、私どもは、自民党理事の緊急動議も聞こえませんでしたし、委員長がそれに従って採決をしたとは全く見えませんでした。
ましてや、可決などしなかったし、自自公がもくろんだ一昨日の強行採決は全く不発に終わったのです。つまり、採決はなかった、そして可決もなかったのです。(拍手)
テレビや新聞では、このいわゆる盗聴法を含む組織犯罪対策三法案が参議院の法務委員会で可決されたと報じられ、国民はそれを信じてしまうかもしれません。委員長が、一条法務委員長が嘘をついた罪は重いと言わねばなりません。
私どもは、国民すべての方に、強行採決という暴挙はあったがそれは不発に終わったこと、この採決は無効であることを報告する義務があります。そこで、一昨日の夜八時五十分前後のことを、国会内の院内テレビからとりましたビデオと、そして速記部から受け取りました未定稿で再現するとこのようになりますので、国民の皆様にしっかりとお聞きいただきたいと思います。
ちょうど八時五十分ごろのことでございます。もちろんこれは私の決められた質問時間のまだ途中でございました。そこで、私はまず法務大臣にこのようにお尋ねしたんですね。よろしいですか。皆さん聞いていてくださいね。今……(発言する者多し)
○議長(結城静香君) 御静粛に願います。
○篠原秋穂君(続) もう一度申し上げます。
速記部から受け取った未定稿で再現いたしますので、皆さん聞いていてください。法務大臣にお尋ねしたところでございます。
法務大臣、よろしいですか、と私は尋ねました。今、私がいろいろ議了できない理由を話しましたけれども、法務大臣の御答弁ももちろん欲しいんですけれども、私は総理にも先ほどからぜひ質問をしたいと申し上げておりましたが、大臣はこの総括質疑をすることに反対でいらっしゃいますか、賛成でいらっしゃいますかと。国務大臣陣内孝雄君が答えております、その点については委員会でお決めいただくことだと思います。で、篠原秋穂君、私です。申しわけありません、今全く聞こえませんでしたので、もう一度お願いできますでしょうか。このように言いましたのは、ふだんは四十三委員会室というのは大変広いところでございます。自民党の委員の方々はよく席を立っていらっしゃいまして、全く閑散としているような委員会なんですが、この日は大勢の傍聴人がいらっしゃいまして、異常な雰囲気の中で全く御答弁が聞こえませんでした。(発言する者多し)
○議長(結城静香君) 御静粛に願います。
○篠原秋穂君(続) すると、国務大臣陣内孝雄君はこのように答えられました。委員会でお決めいただくことだと思います。で、(「そのとおり」と呼ぶ者あり)。で、篠原秋穂君、では、これは多分理事懇か理事会での協議になると思いますので、委員長、ぜひ総理への質問ができるように総括質疑を開いていただきたいんですが、明確なお答えをいただけませんでしょうか。このように私が言いましたら、委員長一条五月君、彼女はこのように答えました。理事会で協議をいたします。理事会で協議をいたします、そのようにお答えになった。速記録にきちんと残っております。そして、ただし、そのようなことであれば、どうして金曜日の八月六日の理事懇の際にそういう御主張がなかったんでありましょうか。大変私は不思議に思うわけでございます。少なくとも……(発言する者多し)になっております。それで私、
篠原秋穂君、私どもはまず、皆さんちょっとお静かにしていただけませんでしょうか。これは速記録を読んでおりますので。私どもはまず、皆さんちょっとお静かにしていただけませんでしょうかと速記録に書いてあります。(「理事会、理事会」と呼ぶ者あり)で、私がまた申し上げます。私どもは、六月一日に衆議院からこの法案が送付されたときに、まず質疑の日程について全体にこういう形で質疑をしていこうという提案をいたしました。そのときに、しっかりと総理を招いての総括質疑をお願いしたいと申しております。先週の金曜日は、そういったことの話し合いもできないうちに、一条委員長が御自分の裁定できょうの組織三法の委員会を開くと、それこそ強行なさったわけで、今ごろ、金曜日になぜ言わなかったのか、そんなことをおっしゃるとは思いませんでした。今ぜひ、もしあれでしたら今から理事懇を開いていただきたいと思います。(「そうだ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)。
それで、委員長一条五月君、篠原理事に申し上げます。質疑を続けてください。質疑を続けてくださいと委員長は申されたんですね。そして、篠原秋穂君、私は、理事会を開いていただくということの確約がありましたら、私、これから質問したいと思います。(発言する者多し)で、また、委員長一条五月君、篠原理事に申し上げます。質疑をお続けください。(「答えは」と呼ぶ者あり)。それで委員長が、先ほど申し上げましたように、理事会で協議をしますということは申し上げましたが、それは今やるべきことではございませんから、質疑を続けてください。質疑をお続けください。こうおっしゃったんですね。そして私が、今、理事会を開くとおっしゃいましたよね。協議をするとおっしゃいましたね。いつそれはなさいますか。
私が翌日速記録を要求いたしましたら、一応私の質問のところだけ、もちろん長い質疑の最後のところだけ今申し上げたんですが、ここまでいただきました。その後、委員長の許可をいただきまして、その後のところがどうなっているか、いただいたところ、この後は鈴木正孝君となっていて委員長と書いてあります。私はこれは聞こえませんでしたが、こう書いてあります。その次に、委員長一条五月君が、後刻、後刻……(議場騒然、聴取不能)、鈴木君提出の動議に賛成の方の挙手を願います。(議場騒然、聴取不能)、委員長退席、このようになっているわけです。ここで速記は終わっております。
委員長は、挙手を願いますとおっしゃったけれども、鈴木理事は委員長としかおっしゃっていないわけで、この中身が何だったのかだれにもわかっておりません。一体何の動議だったのか。委員長は中身を聞かずともわかっていて挙手を求められたのか。それなら緊急動議の出る以前に強行採決を決めていらしたことになるわけです。
このとき……(発言する者多し)お静かにしていただけませんでしょうか。このとき委員会室は騒然となりまして、速記録にある鈴木理事の「委員長」という言葉も聞こえなければ、私たちは、委員長が鈴木君と指名なさった声も聞こえませんでした。指名はありませんでした。ということは、委員長の了解なしの自民党理事の発言は不規則発言でしかないわけです。つまり、月曜日、私の質疑時間中に行われた緊急動議は無効でしかありません。
その上、私たちは、委員長が挙手の確認をなさっていないこともしっかりと確認しております。もちろん、記者会見でおっしゃったような二度目の採決も見ておりません。
委員長は、記者会見で二度採決をしたとおっしゃっているんですよね。私たちは二度の採決を全く見ておりません。これはビデオでも議事録でもしっかり確認できることです。委員長は、記者会見で、何人の人が手を挙げたんですかという記者からの質問にもお答えにはなれませんでした。それは当然のことです。数えていない、確認などできる状況ではなかったからです。
つまり、緊急動議の中身を聞かず挙手をさせ、そして確認をせず、可決しましたともおっしゃらず、まるでこそこそと逃げるように退場なさったわけです。速記の方々は、かわいそうに、委員長が休憩とも散会ともおっしゃらなかったので、ずっと座り続けておられました。
まず、私どもは、この採決が無効であることを怒りを持って表明いたします。また、それを可決されたと議長に報告され、記者会見までされた委員長の良識を疑わざるを得ません。
私は、昨日すぐに委員長に、法務委員会の理事懇談会を開いていただきたい旨の連絡をし、委員長としては多分、一昨日の委員会を休憩としたかったのであろう、多分、その次の日一晩寝て反省、再考なさって、委員会を再考なさろうと思われているのではないかと思い、理事懇談会を開くことを要請いたしましたが、委員長からは、必要なしとの代理の返事しかいただけませんでした。
私どもは、まず、委員長が良識をぜひお取り戻しいただき、委員会を再開なさり、一昨日の前代未聞の強行採決の企ては間違いだったと謝罪なさることを切に願っておりましたが、態度をお変えにならないということであれば、前代未聞の、そして参議院として恥ずべき一昨夜の暴挙に対し、国民を代表し委員長の解任決議を出さざるを得ないとの結論に達しました。
一条法務委員長、私はしかし、こうした解任決議を出さざるを得ないことを大変残念に思っております。もう一度委員長に再考をお願いしたいと思います。
あなたが、一条委員長が法務委員長になられてからのまじめで誠実なお人柄と委員会運営を私はよく知っております。(発言する者多し)不規則発言はおやめいただけませんでしょうか、せっかく委員長のことをお話ししておりますのに。
失礼ながら、色々と運営に苦労されていましたし、失敗も多々見受けられました。しかしあなたは私達の提案を謙虚に受け止め、「私達はみんなを幸せにする法律を作らなきゃいけないんですね」と仰られた日の事は良く覚えています。そして、人一倍勉強されていたことも良く覚えています。
それだけに、自民党の誘いで与党の仲間入りをすることになり、委員長としては、本心を裏切ってのこのいわゆる盗聴法への賛成と、今回の採決を強行せざるを得ない立場になったことについては日夜悩まれたに違いなく、同情を禁じ得ないのでありますが、ともに人権と正義と平和のために闘ってきた一条法務委員長にこそ一昨日のような強行採決を企てていただきたくはありませんでした。
委員長としての解任の理由の第一は、以上のように、私、リベラルの会の質疑を途中で打ち切る、つまり質疑の妨害をした自民党理事の動議を採用し、組織犯罪対策三法案の採決を強行したことであり、それが全く無効であるにもかかわらず、議長にまで採決、可決したと報告し、なかんずく、記者会見をして、この採決は有効であり組織犯罪対策三法案は可決されたと伝えたことです。
こうしたいわゆる盗聴法の採決は議会制民主主義に対する冒涜であり、よもや、参議院と二院制の意義を高く評価し参議院の改革に熱心に取り組んでおられる結城静香議長も、このような暴挙を……(「ストップ、ストップ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
○議長(結城静香君) どうぞ発言をお続けください。
○篠原秋穂君(続) こうしたいわゆる盗聴法の採決は議会制民主主義に対する冒涜であり、よもや、参議院と二院制の意義を高く評価し参議院の改革に熱心に取り組んでおられる結城静香議長も、このような暴挙をお認めにはならないと信じます。
さて、くしくも委員長が職権を乱用して一昨日の委員会を設定した先週の金曜、八月六日は、五十四年前、広島に原爆が落とされた日であり、そして良識の府の参議院として恥ずかしい強行採決を企てた、もちろんこの採決は無効でございますが、その採決を企てた一昨日は長崎に原爆が投下された日でありました。
情報を操作し、国家の管理を強め、戦争へと突入した結果、多くの人命が失われたあの戦争の後、私たちは二度と国民のプライバシーを侵し、国民を監視するような国にしてはならないと誓い合ったはずです。(拍手)
それなのに、今、小渕内閣は、国家の管理を強めるこの危険性のある、そして国民の生活を再び不安に陥らせるようなこのいわゆる盗聴法を、一昨日、強行採決の挙に出ました。
私どもは、当初からこの法案には問題が多いと訴えてきましたが、審議を進めるにつれ、この法案の問題点がますます顕著になってきました。なぜ廃案にすべきなのか、継続にすべきなのか、今ここで議了してはならないのか、いわゆる盗聴法の問題点を指摘しなければなりません。(拍手)
委員長にも与党の方々にもぜひもう一度理解していただきたいと思います。
この三法案は、六月一日に衆議院から参議院に送付されてきました。大変残念なことに、衆議院では審議は全く尽くされず、また公聴会などで国民の意見を聞くこともなく、問題を積み残したまま、自民党の委員長によって強行採決されるという異常な状態で衆議院を通過したわけです。
参議院では、このような状態を非常に憂い、三法案の問題点をしっかりと究明する必要があるとの観点から、国民の立場に立った審議を行ってきました。しかしながら、十分な審議を尽くしたという与党の言い分は決して認められるものではありません。
確かに、参議院では良識の府として、議員らによる対政府質疑だけでなく、参議院の会の委員外発言を認めたり、また参考人質疑や……(「休憩休憩」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然)
○議長(結城静香君) 御静粛に願います。御静粛に願います。(「議事進行」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然)
発言を続けてください。
○篠原秋穂君(続) 参議院ではこのような状態を非常に憂え……(「議事進行」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然)
○議長(結城静香君) 御静粛に願います。御静粛に願います。
篠原さん、発言を続けてください。どうぞ。どうぞ。(発言する者多く、議場騒然)御静粛に願います。
○篠原秋穂君(続) しかしながら、十分な審議をし尽くしたという与党の言い分は、決して認められるものではありません。
確かに、参議院では良識の府として、委員らによる対政府質疑だけでなく、参議院の会の委員外発言を認めたり、ただ二院クラブの委員外発言は、一昨日、せっかく来ていただいたのに委員長の審議強行打ち切りで実現しませんでしたが、とてもこれは残念なことです。
ただ、参考人質疑や中央公聴会……(発言する者多く、議場騒然)
○議長(結城静香君) 議員は議席に御着席ください。
どうぞ。(発言する者多く、議場騒然)議席に御着席ください。御静かに願います。御静かに願います。不規則発言はお慎みください。
どうぞ。(発言する者多く、議場騒然)御静かに願います。不規則発言はお慎みください。
どうぞ御発言ください。
○篠原秋穂君(続) 先ほども申しましたように、残念ながら、二院クラブの委員外発言は、一昨日、せっかく来ていただきましたのに委員長の審議強行打ち切りで実現いたしませんでしたが、参考人質疑や中央公聴会を開いて専門家や一般国民から広く意見を聞いてまいりました。しっかり私どもは参議院として審議を尽くしてきたと思っております。
しかしながら、私たちが要求していた総理が出席する総括質疑は開催されませんでした。
総理は、本会議で、こういった法案が通ると警察が権力を乱用するのではないかと言う人がいるが、私は警察を信用しているし、違法捜査などということは決してあり得ないという趣旨のことをおっしゃいましたが、そういった総理の楽観主義と、ただ総理のお言葉だけでは国民の心配は決して消えないのではないでしょうか。だからこそ、委員会での総括質疑に応じることできちんと国民の疑問に私どもは答えてほしかったのです。
また、衆議院で自民党の委員長が強行採決をした後、総理は、衆議院の自民党の法務委員長に電話をなさり、よくやったとねぎらわれたそうですが、幾ら電話魔と言われていらっしゃる総理であっても、立法府の手順と民主主義を無視した委員長の態度を褒めたたえるとは総理にあるまじき行為としか思えず、それも確認させていただきたかったのです。しかし、総理出席の総括質疑はついに実現しませんでした。(発言する者多く、議場騒然)
○議長(結城静香君) 御静粛に願います。議員の皆さんは議席に着いてください。議席に着いてください。議員の皆さんは議席に着いてください。御静粛に願います。議員の皆さんは議席に着いてください。(「休憩してください。抗議したいんです」と呼ぶ者あり)
今、各党の理事が協議をしておりますから、それにお任せください。皆さんはお着きください。各会派の代表が協議をしておりますので、皆さんの御意向はその代表者が協議されておりますから、どうぞ議席にお着きください。議長の整理に従ってください。
篠原さん、どうぞ発言を続けてください。どうぞ御静粛にしてください。
○篠原秋穂君(続) また……(発言する者多く、議場騒然)
○議長(結城静香君) 議席にお着きください。聞こえますか。議長の指示に従ってください。──どうぞ発言を続けてください。(発言する者多く、議場騒然)──議員の皆さんは御着席ください。議席にお座りください。今、各会派の代表理事が相談をしておりますので、どうぞ御着席ください。そして、篠原さん、発言を続けてください。(発言する者多く、議場騒然)──発言中も理事の協議は続けておりますから、どうぞ議席に御着席ください。御発言願います。(発言する者多く、議場騒然)──篠原さん、発言を続けてください。(発言する者多く、議場騒然)──どうぞ議席に着いてください。議席に着いてください。(発言する者多く、議場騒然)──皆さんの代表理事が協議をしておりますので、どうぞ議席にお戻りください。(発言する者多く、議場騒然)──どうぞ発言を続けてください。発言を続けてください。(発言する者多く、議場騒然)──篠原さん、どうぞ発言を続けてください。
○篠原秋穂君(続) はい。私は発言を続行したいと思いますが、何やらよほどのことが起きたようで、議場が騒然となりました。
その理由は、私に対する個人的な中傷とセクハラ発言のように今聞こえました。それをしっかりと私にお話しいただいて、解決できない限り私はここを立てません。そして、発言はできません。教えてください、どういうことがあったのか。
個人的中傷やセクハラは、私はこんなところで許せるはずがありません。(拍手)
議長、お願いいたします。私は、どんなことが言われて、こんなに議場が騒然となったのか、ぜひ私に聞かせていただきたい。それがわかってからしか発言を続行できないと思います。(「休憩、休憩」「議事進行」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
○議長(結城静香君) これにて十分間休憩いたします。
午後六時九分休憩
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午後六時五十一分開議
○議長(結城静香君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
休憩前の議事において、不規則発言の中で不穏当な発言があったとの指摘につきましては、後刻、議院運営委員会理事会において速記録等を調査の上、議長において適切に措置いたします。
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○議長(結城静香君) 法務委員長一条五月さんに対する解任決議案を引き続き議題といたします。篠原秋穂さん。
〔篠原秋穂君登壇、拍手〕
○篠原秋穂君(続) 一昨日、私の法務委員会での質疑中に緊急動議が出まして、私の質問は打ち切られました。それと同じことが、今また自民党からの不規則発言によって打ち切られたことは大変残念でございますが、私は粛々と趣旨説明をいたしておりましたのに、大変私を侮辱するような発言があったとのことでございました。
全くこの壇上においてはわかりませんでしたけれども、リベラルの会の方々や他の野党の方々もお立ちになって騒然といたしましたとき、多分、傍聴席の方々やテレビでこれを見ていた方々は、私ども野党が審議を妨害しているかのようなイメージを受けられたかもしれません。しかしながら、その種をまきましたのは自民党の方と聞いております。
それも、ちょうど一条委員長に対して、私が長い間法務委員を務め、一条委員長の誠実なお人柄とそのまじめな委員会運営について申し上げておりましたそのときに、なぜこのような強行採決をなさるのか随分悩まれたのではないか、そのように話しているときに、大変下品な言葉で私をあんたとかおまえとか、そんな言葉で人様から呼ばれたことはございません。それを、元暴走族の行かず後家が何を言うか、そのようにおっしゃったそうでございます。
私は、そんなことは何度も今まで言われてまいりましたから、普通のところでございましたら軽く聞き流してもよかったのでございますけれども、ここは参議院、良識の府の参議院でございます。そこでそのような人権を無視するような発言をなさったことは大変遺憾なことです。
なおかつ、私はこれを個人的な中傷とか差別とは思っておりません。多くの人たちが、特に与党の方たちは女性に対して大変ひどい差別感と偏見をお持ちです。今までの政策を見ましても、現在女性の就職率は六割を切り続けている状況が続いています。自民党が長年政権をとってきた中でどれだけの女性が仕事上の悩みを抱えているのか。住宅政策や経済政策、雇用政策、そして福祉、それらについて本当の意味で人々が生きやすい政策をつくってきたか。
それは決してそうではありません。そこには常に女は男のサポートだけをすれば良いとばかりの、あくまで脇役としての政策しか採ってきませんでした。今の不規則発言にも明らかなように、女が結婚せずに、あるいは結婚した後でも働き続けるという事については、常に圧力が掛けられているのです。しかも、未だに学歴や、出自による差別が色濃く残っています。
以前にも国会において、例えば法務委員会の理事懇談会に入る前、与党の男性議員から女の子なんだからおとなしくしていなさいというふうに言われました。女の子なんだからおとなしくしていなさい、秋穂ちゃんというようなことをよく言われました。女の子なんだからおとなしくしていなさいと。私は女の子ではありません。また、おとなしくしていなさいというのは、対等な立場にある国会議員に言うべきことではないと思います。それは、一条法務委員長にとっても、さらには結城議長にとっても侮辱でなくて何でしょうか。
そして、これには性差別があります。女の子なんだからおとなしくしろ、女だからこうしろというステレオタイプに基づく発言といえます。
私は、確かにいわゆる暴走族をやっておりました。それは、あまり誉められたことではありませんし、今思うと馬鹿なことをやっていたなあと思うこともあります。(「その通り」と呼ぶ者あり)しかし、そうした前歴を調べ、それにより能力に関係なく、昇進などで差別を付けるという企業の在り方には、どうしても納得出来ないのです。
さらには、この後審議されるであろう住民基本台帳法の一部を改正する法律案、いわゆる国民総背番号制に付きましても、このような偏見を拡大する法となるのではないかと強く懸念しております。(拍手)
私たちリベラルの会は、どういう生き方をしても差別されない、偏見を持たれない、公正な社会であるよう政策をつくってまいりたいと思っておりますが、どうも先ほどの不規則発言を聞きますと、自民党の方々にはそのようなお気持ちはないようで大変残念です。
(中略)
今回の通信傍受法は、これからの二十一世紀の日本がどうなるかを決するほどの重要法案であります。それを、憲法の規定を盾にとって、私、リベラルの会の理事に対し、脅迫材料のように採決しろ、採決しろと理事懇で自民党、自由党、公明党、治民党が言い続けましたのは、むしろ国民軽視として非難されるべきことではないでしょうか。(拍手)
衆議院では明らかにされなかった問題点を、この法律の、特にいわゆる盗聴法の問題点を参議院で明らかにし、慎重かつ熱心に審議している最中に、衆議院がみなし否決をするのであれば、それは参議院を侮辱するものであります。もしそうした衆議院のみなし否決をするような態度が見えれば、与野党そろって抗議する姿勢こそ、参議院の存在意義であると私は思っております。(拍手)
そう思っておりましたから、自自公のそのような脅迫にも動ずることはありませんでした。そして、法律案のさまざまな欠陥を国民の前に明らかにしてきましたし、今後もさらなる審議を尽くしていくことが国民の利益であると考えます。それなのに、審議を突然打ち切って強行採決を企てるとは、国民が政治への不信をますます強めることになるでしょう。一条法務委員長の責任は大変大きいと言わねばなりません。
そもそもこの法案は本当に必要なのでしょうか。審議をしていく中で、その必要性の希薄さは明らかになりました。
法務省では、二、三十年前から通信傍受を可能にする法律の制定を検討されてきたということです。若い検事をアメリカへ毎年留学させ、彼らはアメリカで、もちろん捜査に熱心で日本の組織犯罪を何とか食いとめたいという思いからだとは思いますけれども、盗聴が捜査に大変有効だと聞き、そして日本でぜひともこの盗聴法を成立させたいと皆さんに諮られたと聞いております。
自白というものが年々得られにくくなってきている状況の中で、何とか日本でもこの盗聴法の捜査方法を取り入れたいというのは、その若い検事の方々だけではなく、法務省全体の長年の悲願であったと聞いております。
○議長(結城静香君) 篠原さん、時間が相当過ぎておりますので、そろそろまとめてください。
○篠原秋穂君(続) はい、申しわけありません。なるべく早く話したいと思います。
しかし、本当になぜこの法律が必要なのでしょうか。なぜ強行採決を企ててまで急がねばならなかったのでしょうか。
陣内法務大臣は、趣旨説明の中でその理由を、急増する組織犯罪に対処するためということを言い、その最大の具体例として、一連のオウム事件を挙げてまいりました。大臣は、某テレビ番組の中で、通信傍受法、つまりこれは盗聴法のことですね、これがあればオウム事件は防げたという趣旨の発言をなさいました。しかし、この法律があってもオウム事件は未然には全く防げなかったということは審議の中で明らかとなりました。大臣は後になってテレビ番組での発言を撤回なさいましたが、テレビ番組であのような発言をしたということで国民に大きな影響を及ぼしたことは間違いありません。
また、与党の委員は審議の中で、暴力団、オウムなど昔とは犯罪の形態が変わってきており、通信傍受法があればいかにもサリン事件は起きなかった、つまりこれも盗聴法のことですが、これがあればいかにもサリン事件は起きなかったというような言い回しで質問をしております。
盗聴法があってもオウム事件は未然には防げないのに防げるかのような言い回しをすることは、これは明らかに国民を惑わすものではないですか。そして、国民の不安をあおることによって盗聴法の必要性を印象づけようとする卑劣なやり方ではないかと私は思います。
さらに、組織犯罪の大ボスを捕まえるには携帯電話の傍受が必要だ、だから盗聴法がどうしても必要なのだということもたくさん言われてまいりました。ところが、携帯電話の傍受は現在の技術では非常に困難であることが、ほとんど不可能に近いということが審議の中で明らかになりました。そうすると、今度は、法案が成立すれば補助金を出して技術開発をするからいいんだと、そういう答弁をなさったわけです。
不可能なことをできると言い、できないことがわかれば今度はこれからやります、そうおっしゃる。これでは全く詐欺と同じではないでしょうか。
(中略)
確かにこの法案は、国民の皆さんが思われるように、固定電話を想定してつくられております。しかし、今この世界は通信の技術はどんどん発達し、インターネット通信が本当にこれから隆起してまいると思います。そうしたインターネット通信の傍受、つまり盗聴についてはほとんど想定されていないのがこの法案です。このことが、多くのインターネットを使ってさまざまな通信をしていらっしゃる方々や、またそのインターネットのプロバイダーの方々や、そして通信業者、そのすべてにかかわっている方々から問題提起され、不安が訴えられてまいりました。
このインターネット通信の盗聴については、さらなる審議をお願いしたい、そうした切なる訴えも私ども野党にはたくさん寄せられておりますし、また、与党がお呼びになった参考人からもこの問題点はるる指摘されました。
この法案のままでは、不特定多数のメールが警察に捕捉され、これから日本の未来を担うであろう通信産業に悪影響を与えることも指摘されました。インターネットを初めとする情報通信産業は、本当にこれからの日本の経済にとって大変重要であり、今後ますますこの通信産業分野によって不況を打開できるかもしれないという、こういう今、瀬戸際に来ております。
ところが、このいわゆる盗聴法案はこれに逆行するものでしかありません。情報通信産業を萎縮させるものでしかないのです。これらの通信は、不特定多数が自由に利用してこそ意味があるからです。盗聴法が施行されれば、いつ監視されるのか分からないのですから、多くの利用者が離れることになります。組織犯罪防止のために、いや、本当の組織犯罪者には通用しない法律のために、インターネット発展の芽を摘んでいいものでしょうか。失業率が五%にならんとする雇用不安を抱え、貸し渋りも決して解消していない今、多くの人々がボーナスももらえず、またボーナスも払えない人たちが大変苦しんでおります。そして中高年の男性の自殺もふえておりますし、そうした多くの国民が、早くこの雇用不安を何とかしてほしい、景気を回復してほしいと切に願っているこのときに、逆に日本の経済を牽引していくに違いない通信産業界を萎縮させ、何十年かこの発展を妨げるようなこの盗聴法案を通していいものでしょうか。
政府は、従来どおりの経済政策しかできず、それでいて景気は回復しているなどと、ただひとりぬか喜びをしておりますが、将来の産業であるこのインターネットをつぶすようなこの盗聴法を数の力で押し通しては将来に禍根を残すことになると思います。そしてこの法案を通すことは、私たち今国会議員として本当に恥ずかしいことだと思います。
さて、さらに、インターネットを使っている市民やその業者の方々から出ている懸念として……
○議長(結城静香君) 篠原さん、そろそろおまとめいただけないでしょうか。
○篠原秋穂君(続) 申しわけございません。あと少しでございますので、お待ちいただけたら幸いです。
さらに、インターネットを使っている市民やその業者から出ている懸念として、今回の盗聴法案では通信事業者内部の情報の漏えいが発生しないようにする技術的な歯どめが規定されておりません。そのことへの憂慮や盗聴への協力にかかるコストのこと、顧客からの法的な損害賠償などのトラブルへの対処等も解決していないという訴えが来ています。
(中略)
○篠原秋穂君(続) どうかお願いしたいのですが、良識の府である参議院の名を汚さないようにしていただきたい。良識の府とは名ばかりかと国民は今笑っております。なぜ、存在しなかった採決があったと言えるのか、国民はそんなことで言いくるめられたりはしないと私は思います。
もし、おかしいとお思いならば、何でしたら、私、もう一度その速記録をお読みいたしましょうか。残念ながら、原稿は手元にはございません、その部分は。しかし、全部覚えております。
私が質問の最中、るるこの法案の問題点は全く究明されていないことを、また解決していないことを訴え、この法案を議了すべきではないと言い、そしてまた、総理を呼んでの総括質疑をして、連合審査もして、この法案を継続すべしと訴えてまいりました。そのとき、総括質疑について、委員長は理事会で協議しますとおっしゃったんです。そのとき、一条法務委員長は、法案をあの時点で議了する気はなかったんだと私は思います。ですから、理事会で協議をして、総理を呼んでの総括質疑をするとお約束なさったわけです。
ですから、では、今してくださいますかと私が言ったのに対し、委員長は後刻、後刻とおっしゃった。それは……
○議長(結城静香君) 篠原さん、そろそろ終えてください。
○篠原秋穂君(続) はい。もう終わります。
委員長が後刻、後刻とおっしゃったそのときに、自民党の理事から緊急動議が出たようであります。しかしながら、速記録には委員長としか出ておりません。中身は全く聞こえず、速記録には書かれていないんです。それなのに、挙手のお願いをしますと委員長はおっしゃり、そして全く挙手の数を数えず、可決したとも申されず、そのまま席を立たれてしまいました。速記の方々は、休憩とも散会とも委員長がおっしゃいませんでしたので、ずっと座り続けておられた。それが速記録、そして今週月曜日、一昨日の、一九九九年八月九日八時五十五分の出来事でありました。(拍手)
このように、この盗聴法案の採決は全く存在しなかったのであり、可決もされてはおりません。それを採決したと言い、可決もあったと言い、あろうことか、結城静香参議院議長にまで偽りの報告をし、記者会見までして国民を欺き愚弄したこの一条法務委員長の責任はとても許せるものではありません。
○議長(結城静香君) 篠原さん、篠原さん、どうぞ終えてください。
○篠原秋穂君(続) あと一言です。
どうぞ、良識の府である参議院の名を汚さず、一昨日の法務委員会の採決は全く無効であったことを全員で確認し、そして法務委員会を再開し、いわゆる盗聴法の審議を続行するか、潔く廃案になさることを切望し、私の一条法務委員長解任決議案の代表趣旨説明を終わりたいと思います。(拍手)
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○議長(結城静香君) 本決議案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。鈴木正孝君。
(中略)
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