ストライキ・プロ野球選手会を支持する


 18・19日のストライキは決行され、セ・パ12試合が中止されました。その後の労使交渉の結果、25・26日のストライキは回避されました。大阪近鉄バファローズ・オリックスブルーウェーブの球団合併容認と引き替えに、新球団の来期参入・新規加盟料(現行60億)や既存球団を買収した際の加盟料(同30億)を撤廃し、預かり保証金制度を導入するなど、球団数は変化しないよう経営側に妥協させたという内容です。
プロ野球スト収拾…12球団維持へ(読売新聞)
 私は中日ドラゴンズのファンです。
 各種世論調査に拠りますと、全体としては、ストライキ支持派が多かったのは間違いないようですが、ファンサイトをいくつか見た限りでは、ドラゴンズファンはストの賛否は完全に割れていました。
 当事者球団はともかく、他球団のファンサイトを見て回ったわけではないので即断はできません。ただ、ドラゴンズファンにスト反対派が比較的多かったのは、優勝間近の状況でのスト決行と、今ひとつは残念ながら対岸の火事に見えてしまうのが理由と思います。(組合活動への反感も大きな理由でしょうが、これはどの球団ファンのスト反対派でも共通しているのでまた別の話になります)
 同じ球団を応援する方を批判するのは心苦しいけれども、ここで反論しておかないと後悔すると思うので、簡単ながら始めさせて頂きます。
 東山にしこ氏の主張を見て、血の気が引きました。現在の一面の主張を引用します。

2004年9月6日に発表された内容に基づく限り、労働組合選手会のストライキに反対です。
たかがスポーツマスコミの繰り出すネタを鵜呑みにするファンや、
無力を装い安全地帯に逃げるOBや、
弁護士のキナ臭い動きを見抜けない選手会の声をきくよりも、
経営側の声をよくきいたほうが問題解決にはよほど有益です。
2004/9/7 東山にしこ

 東山氏にとって、選手は奴隷でしかないのでしょうか。掲示板では「利害が異なり、しがらみも複雑で、それぞれ弁も(古田の何倍も)立つので
あろうオヤジたちに、意見がまとまる時間を与えなかった選手会事務局
の勝利かもしれないですね。選手会側は選手の意見なんて、一部のかしこ
い人がだーっと押し切れば「まとまる」もんね。
オーナー側は利害が違いすぎるのを、とにかくまあ讀賣にぶらさがってしの
ごうや、でまとまっていたのに、そこを真っ正直に攻撃されちゃたまらん。

どいつもこいつも、讀賣が嫌いなのをいったん棚上げしちゃどうなんだ。そんなにナベツネ+堤のしようとしたことはおかしいのか?(9/18)」と主張していますが、東山氏の主張はもはや経営者側の主張にも耳を傾けようというレベルではありません。選手会の主張には聞く耳持たず、「経営側の声をよくき」けというのですから。しかも東山氏は、球団合併賛成派ではない(変わりつつあるようですが)。批判されるべき「利害が違いすぎる」オーナー側の失策を擁護の理由に挙げ、恰も選手会にしてやられた被害者であるかのように書いているのは、なるほど経営側を全面支持するなら何とでも理屈が付けられるのだと勉強にはなりました。
 マスコミが選手会を支持するよう煽動したかのような書きぶりですが、とんでもない。
 この説が嘘なのは、読売、中日、TBSが球団の親会社であり、フジテレビが株主であることを挙げれば十分でしょう。これ以外でも日経は労組活動に好意的な新聞ではありません。つまり、主立ったマスコミで選手会に初めから味方しそうなのは朝日系列くらいであり、あとは利害関係から選手会にとって敵ばかりという状況でした。
 恐らく、スト賛否が五分五分なら決行はできなかったでしょうし、決行すれば一気に反ストの世論を煽り立て、選手会が袋叩きにされたのではないでしょうか。選手会支持派が圧倒的多数と自覚していたからこそ、読売以外のマスコミは選手会を袋叩きに出来なかったのです。
 それとも、選手会が世論を誘導したのはけしからんというつもりでしょうか。経営側はさておいて?
 もちろん、ライブドアの弁護士と同一人物が選手会の弁護士を務めているなど、明らかに選手会側の失策はありました。(だが、経営者側の弁護士について報道されないのはなぜでしょう)
 さらに、誰も触れませんが、選手会の会長は一貫してセ・リーグの人です。労働組合として承認される以前についてはわかりませんが、組合化以降の会長は中畑清氏(読売)、原辰徳氏(読売)、岡田彰布氏(阪神)、正田耕三氏(広島)の順です。正田氏の後継が、現会長の古田氏です。
 岡田氏は途中でオリックス・ブルーウェーブにトレードされましたが(現在はタイガース監督)、就任時は全員セ・リーグの選手でした。これも極めて重大な問題でしょうし、古田氏が逡巡した大きな要因になったでしょう。古田氏の所属するスワローズは、今消滅するわけではありません。古田氏には当事者球団の選手より、「失う物」が大きい立場なのです。選手会長がパ・リーグ所属の選手ならば、もっと強硬に合併反対したであろうと思われます(それがうまくいったかどうかは別として)。
 このような問題があり、さらに選手会の妥結した内容も全面支持は出来ないけれども、なお私は選手が経営側の独走をいささかでも制御し得たことを評価します。選手会が一方的な善とも、経営側が一方的な悪ともいうつもりはありません。今の経営側のやり方が、あまりに悪質だからこそ彼らに任せることは出来ないと判断したのです。
 一方的な経営側賛美と、裏返しの選手・ファン蔑視に与することは絶対に出来ません。
 古代ローマの剣奴を見る観客の目はこうだったのではないかと思ってしまいました。それは、人間として恥ずかしいことではないでしょうか。
 …今日の大阪近鉄バファローズ消滅マジック2。ドラゴンズのファンがどうこう言うのは烏滸(おこ)がましいけれども。
 この項続きます…。

管理人 K・MURASAME       

9月24日2時10分      


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