この『Sa・Ga3』評は、『ゲーム批評』誌別冊『読者あっての本ですから2』に採用された投稿です。一番思い入れのある作品だけに、採用された時は、本当に嬉しかった。今と違ってSa・Ga仲間の存在も分からない時でしたから、その喜びはひとしおでした。謝礼が無かったのがちょっぴり残念でしたが。
大体私のSa・Ga3についての評価、気持ちはこの投稿で書き尽くされています。ページの「はじめに」もこれの焼き直しですし…。投稿時に書き切れなかった部分、表現の稚拙な部分、今では評価の変化した部分についてはいずれ補足しますが、今も大筋では投稿時の気持ちのままです。そのため、明らかな誤字を除き、敢えて原文に手を付けていません。ただし、10段階での評価はWebで追加したものです。
「難易度」は数字が大きいほど難しく、「価格」は数字が大きいほどお買い得という意味になります。
結構辛口な部分もあります。でも、Sa・Ga3好きなんです。やっぱり。
総合 | 7 |
---|---|
画像 | 8 |
音楽・音声 | 8 |
操作性 | 8.5 |
物語 | 5 |
世界観 | 8 |
熱中度 | 7 |
動作(アクション) | 7.5 |
難易度 | 3 |
価格 | 7 |
『時空の覇者Sa・Ga3』はスクウェアのGBソフト、Sa・Gaシリーズの完結編となった作品である。手に入れるのに苦労した事、本作を入手してから丸一年他のゲームを買えなかった経験から、個人的に非常に印象に残ったゲームだ。
しかし、Sa・Gaシリーズの中では、評判はあまり良くなかった。そのため、たまに好評を聞くと身構えてしまう始末だった。断っておくが、僕はこの作品が大好きである。それでも悪評を聞かされるとうなずいてしまう自分があった。何より、『ロマンシング サ・ガ』への移行や、FFシリーズの定着により、GB版Sa・Gaシリーズそのものが忘れ去られた感があり、非常に寂しい思いをした。そこで、改めてこの作品を評価してみることにする。
『Sa・Ga3』は、一般的なストーリー主導型RPGである。ここでは、まず欠点から挙げてゆくことにする。
第一作目と『2』では、戦闘に経験値の概念がなく、種族によって成長の仕方が違うのが一つの売りであった。たとえば1では、人間は成長アイテム、エスパーは戦うとランダムで、モンスターは敵の肉を食べて変身することによって成長した。
つまり、育てる自由度が高く、またモンスターの場合相手の肉次第では逆に弱くなってしまうというバクチも楽しめた。
これが『3』では、戦闘が通常のレベル制、つまり敵を倒して経験値を貯め、それに応じてレベルが上がり成長して行く方式となった。そして、代わりにどの種族でも敵の肉(あるいは新たに加わった「パーツ」)を食べて他の種族に変身できるようにしたのである。すなわち基本の「人間・エスパー」(『3』では、開始時の種族を選べなくなり、これに一本化された)、『1』と『2』を踏襲した「モンスター」、「モンスター」と似ているがレベルと共に勝手に変身し、アイテムも使える「獣人」、『2』のメカ(アイテム装備で成長)を踏襲したが、それとは異なり魔法も使える「サイボーグ」、『1』の人間を踏襲した「ロボット」の5つである。
だが、この試みは失敗に終わっている。というのは、レベル制を採用しているため、せっかくの種族別成長の特徴が生かし切れていないのである。モンスターの場合、前作までのバクチ性が失われてしまっているし、サイボーグの場合、レベルとの兼ね合いから装備品での成長には限度があるので、結局より強いレベルのそれに変身せざるをえない。実用性があるのは、アイテムが使い放題のロボットと、技系の武器の効果が絶大な獣人くらいである。しかも、敵として存在する魔物にしか変身できないため、高レベルになると変身の必然性はまったくなくなってしまう(『1』・『2』のモンスターは、味方専用の強いモンスターに変身できることで、これを回避していた)。つまり、あれもこれも欲張ろうとしたため、かえって中途半端になってしまったのである。
これは、ストーリー面にも見られる。すなわち、主人公達の世界に不思議な水瓶があらわれ、多量の水を流し込み始めた。このままでは世界が沈んでしまう。それを阻止するため、主人公は水瓶を出した張本人という神を倒すため、異次元に乗り込むという内容である。しかし、最後の異次元世界はいろいろ詰め込みすぎて性急である。さらに問題はセリフ回しで、前作の主人公と思われる親子連れが主人公に「悪者退治してるんだろ」なんて言う始末。
また、ボラージュという男がいて、一匹狼的なキャラクターで渋かったのだが、エンディングで主人公達に向かって「君たちが心正しき戦士に育って良かったよ」。ああ、イメージ粉砕。何より問題とすべきなのは、固定メンバー4人にセリフがまったくないのが2人もいる事である。別に饒舌であれば良いわけではない。たとえ一言でも、その人物の性格は出すことが出来る。なるほど、主人公なら、あえてセリフを設定しないという事もあるだろう。しかし、共に戦うべき仲間が黙ってついてくるだけというのでは、あまりに味気ない。また、先の親子連れもそうだが、他にも異次元へ行ける戦闘機「ステスロス」の空間は、明らかに前作の「天界」と同じである。この他にも、うまく使えばより物語を深められたであろう仕掛けが、おおかた不発に終わっている。惜しいことである。
長々とけなした後はほめる点。まず音楽。特に好きなのは最初の世界のフィールド曲「未来への旅立ち」。レイアウトや数字の書体も『3』の世界観に見合ったものに変えられていた。操作性もよく、敵コンピュータの思考も良くなっている。
こう書いてみるとけなす点ばかりあるように見えるが、そうではない。どれも「惜しい」点なのである。あと一歩だったのだ。その気持ちが欠点をつい指摘させたくなる。
それに、僕はやはりデューン(主人公の名。改名可)君が好きなのだ。GBのSa・Gaシリーズが不当に低く評価されているという思いとそれが心の中でないまぜになっている。「一将校成りて万骨枯る」という言葉があるが、枯らしてはならない作品なのだ。
(初出『ゲーム批評』第38号、『投稿ゲーム批評 読者あっての本ですから2』、1999[平成11]年3月26日発行)
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